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原稿城

「新・本格推理」への道

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 このページは、光文社文庫『新・本格推理』やその他の推理小説公募へ応募する皆さんへの助けとなるべく作りました。本格ミステリーを書く時の参考にしてください。
(注:『新・本格推理』は終了しました)


『新・本格推理』における新編集長の言葉

[原稿の書き方等について]
 これまでの「新・本格推理」の公募を通して、応募された原稿を見て、内容以前の問題として、原稿の書き方を知らないものが多く目について驚きました。これに関しては、「新・本格推理01」の選評でも詳しく述べておきましたが、まだ同じような不備のあるものが送られてきます。
 選考はもちろん内容本意で行なわれますが、原稿の書き方が未熟であると、内容まで未熟に見えるものです。下選考、本選考を通して、それが不利に働くこともないではありません。採用される数には限りがあるわけですから、内容がほとんど同点だった場合、原稿の綺麗な方が選考委員に良い印象を与えるでしょう。
 また、作家は取材や調べ事が多いので、原稿の書き方も満足に調べられないようでは最初から落第です。選考委員は必死に、良い作品を選び出そうとしています。応募する側も、採用されるように必死になってください。ようするに、綺麗な原稿というものは、自己主張と内容表現の最良のプレゼンテーションだと言うことです。

 読みにくい(醜い、見にくい)原稿は、応募者自身の損になります。つまらない瑕瑾で落選しないよう、以下のような点について注意してください。

1、応募要領を厳守する。
2、原稿の書き方そのものは、標準的な原稿の書き方を踏襲する(国語事典や用語用例辞書などを調べること)。
 文献例:
 最新版 朝日新聞の用語の手引 朝日新聞社
 『日本語の正しい表記と用語の辞典 講談社
 『原稿の書き方』講談社新書
3、印刷時の、文字の大きさ、文字間や行間の設定が解らなかったら、小説などの本を開いてみて、本の印刷された文章と同じようにな形にして、読みやすさ、見やすさを心がける(文字は気持ち大きめ、文字間は詰めて、行間はある程度あける)
4、印刷し終わったら、もう一度読み直し、細かい間違いはプリントアウトに直接手書きで赤を入れる。赤が多くて汚いようだったら文書を訂正して印刷し直す。
5、投稿前に、誰か他人に読んでもらう。内容や書き方、印刷の仕上がりなどの面で、独りよがりを無くすため。

[書き方についての注意]
 以下、『新・本格推理』に応募された原稿に基づいて、いくつか注意をします。

1、文章の書き始めは一字下げる。改行した後も同じ。ただし、「」で括られる会話などは一字下げる必要はない。
2、文章の途中の「?」や「!」の後は1文字あける。
  例:「えっ! それは本当かい?」
3、漢数字と算用数字は混在させない。縦書きは基本的に漢数字。もしも算用数字を混ぜる場合には、ちゃんとルールを作る(たとえば、時間のみ算用数字にする、とか)。
4、送りがなは「送る」「送らない」「本則」等、どれかに統一する。基本的には、送ってある方が読みやすい。
5、リーダーとケイの長さは、原則2文字分。「……」「――」。
  例:「まあ……それで、どうしたの?」
 (リーダーを、中黒「・」3文字分で代用しているものがありましたが、これはだめです)
  ただし、無言の会話などの時は4文字分。「…………」「――――」
 (「―」は、マイナス記号「−」ではありません)
  漢字配当:「…」は、JIS:2144 シフトJIS:8163   「―」は、JIS:213D シフトJIS:815C
 (「……」「――」のそれぞれを、丸ごと漢字登録としておくと便利です)
6、ら抜き言葉に注意する。
7、「すいません」などの口語はできればさける。正しくは「すみません」。ただし、話したとおりに会話を書き写したい場合は、良しとすることもある。
8、英語的表現は使わない。たとえば、「最上の一つ」とか。日本語では、最上のものは一つしかありません。また、3つのものを羅列する時、日本語では「AやB、C」となります。英語では「A、B&C」ですね。

[印刷についての注意]
1、文字は、基本的に明朝体を使って印刷する。強調部分などにゴシック体を使うことはある(全体をゴシック体や丸文字で印刷してはいけない。読みにくいから)。
2、行頭と行末の禁則処理を行なう。
3、印刷時、文字間は詰める、行間は少しあける、余白はちゃんと取る。文字は少し大きめなフォントで。最初は文字間を0に設定し、詰まりすぎなら、少しあける。
4、マイクロソフトの「MS-WORD」を標準のまま使うと、ルビを振った行と、その前の行の間が広がってしまいます。これは格好悪いので、行間を調整するか、印刷した後に、手書きでルビを振ってください。
5、以下のような印刷書式は悪い例です。左は文字間、行間が開きすぎたもの。右は、ルビを振ったがために、行間がガタガタになったもの。


[ワープロ等について]
1、『新・本格推理』では、基本的にワープロ等で印刷した原稿を推奨しています。これは、相手に対する読みやすさを第一に考えた結果です。また、これからの時代、原稿をメール等で送ることは多々ありますから(というより、普通になる)、手書きで書くより、ワープロ等で書いて、電子データを残した方が作家として有利です。
2、ワープロは、マイクロソフトの「MS-WORD」より、「一太郎」や「OASYS」などを個人的には推奨します。ルビの扱いなどの装飾の点で、「MS-WORD」は、縦書きの日本語ワープロとして遜色があります。また、ルビを振って書き上げた文章をテキスト・ファイルにすると、その部分がごっそり削除されてしまいます。これも大問題ですから。
3、動作の軽いエディターを使うのもまた良し。
4、マイクロソフトのMS明朝は日本語フォントとしては格好悪いと個人的には思います(これは、画面上での解りやすさを第一義的にデザインしてあるから)、他の日本語フォントも使い比べてみましょう。

[参考になるサイト]
 原稿の応募に関して、参考になるサイトや本を紹介します。

1、すがやみつる著『作家・ライター志望者のための電脳文章作法』小学館。
2、「下読みの鉄人」 (ただし、ここで書かれている梗概についての話は、個人的には大いに異論あり。梗概なんていうのは、編集者と下読みの勝手な都合ですね。本文の善し悪しと梗概のできふできはあまり関係ないと思います。だって、長編を梗概程度にまとめられるなら、最初からその程度の短編で書きますよ)。
3、久美沙織著『新人賞の獲り方おしえます』徳間文庫。
4、「島田荘司の創作Q&A」。これは原稿の書き方というよりも、本格ミステリーの書き方の最高の指南書です。本格ミステリー界最高の作家・島田荘司先生が、投稿読者の質問に丁寧に回答しています。本格ミステリーを書くための極意をここからどんどん習得してください。
5、すがやみつる/横山えいじ『マンガでわかる小説入門』ダイアモンド社
6、本多勝一『日本語の作文技術』講談社

[傾向と対策]
 そして、これが意外に大事です。選考委員が何を指向し、何を希望しているか。それを知ることです。その意味では、『本格推理15』『新・本格推理01』〜『新・本格推理06までの私の選評は必読でしょう。また、『本格推理』全15巻における、鮎川先生の選評にも目を通していくべきです。
 それらには、原稿の書き方やミステリーの書き方に対する注意や解説がありますから、必ず読んでおいてください。

[期待するもの]
 これから応募する方へのアドバイス。これは原則論であって、強制ではないので誤解しないように。

1、新しい題材、新しい内容を模索する(たとえば、本格仕立てのSFミステリーなんか狙い目だと思いますよ。ただし、かなり書くのは難しいですけれど)。
2、物語内容に相応しい雰囲気に徹底的に凝る。
3、ワトソン役が探偵役に、犯人当て小説を読ませる、という作中作形式は、”逃げ”に見えますから安易に使わない方が良い。
4、物語やトリック、仕掛けに見合った長さで書く。ダラダラ長いのはだめだし、詰め込み過ぎも逆に良くない(無理して、貧弱などんでん返しをたくさん並べる必要はない)。




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