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不定期日記(過去ログ)

2000年5月



2000.05.01
  『泥具根博士の悪夢の密室』は198枚にて完成をみました。短編のつもりが中編になり、長くて疲れました。でも、すぐに立風書房の長編に入らなくては。しかも、1ヵ月で400枚書く予定(予定は未定)。はたして、西澤保彦さん並のペースで書くことができるでしょうか。
 それにしても、見事な短編が続々と集まり、『密室殺人大百科』の目次はたいへん豪華になっています。詳細は[企画進行中]の方を御覧ください。
 最近は、往年のロック・バンド復活ブームですがSTYXが再結成していたとは知りませんでした。去年、「BRAVE NEW WORLD」というアルバムを出していたんですね。聞いてみたら、さすがに良くまとまっています(ただ、昔みたいな勢いはちょっとありません)。
 うちの近くの某大きな公園は、日曜や祭日の夕方になると犬好きが犬を連れて自然と集まり、たんへんな活況を呈します。みんな躾が良くて、仲が良くて、うちのクック様も仲間に入れてもらいましたが、とても喜んでおられました。ムサシムラヤマ・ドギー・ワールドと勝手に呼んでいます(喜国さん、来ませんか)。
 少しストレスが堪ったので、古本屋へ入って解消を。
 収穫:創元推理文庫の乱歩傑作選10冊。角川文庫の乱歩1冊。集英社文庫『アルセーヌ・ルパン傑作選』。広瀬正『鏡の国のアリス』集英社文庫旧カバー。鮎川哲也『下りはつかり』カッバ。海渡英祐『趣味の犯罪 華麗な殺し』トクマノベルス帯。スタイリン・エリン『バレンタインの遺産』ミステリ文庫。リチャード・ウィルスン『第5惑星の娘たち』。エドモンド・ハミルトン『フェッセデンの宇宙』ポケSF。別冊奇想天外『SFのSF大全集』(エドモンド・ハミルトンの短編が載っている!)。パトリシア・モイーズ『殺人ア・ラ・モード』ポケミス。内田善美『空の色ににている』『かすみ草にゆれる汽車』。藤子不二雄『オバケのQ太郎』1巻てんとう虫。すずき真弓『麻衣子』1と3(2がない)小学館フラワー。水野英子『ブロードウェイの星』2巻ソノラマ文庫。あかね書房少年少女推理全集『モルグ街の怪事件』『魔女のかくれ家』。ポプラのルパン2冊。

2000.05.03
 午前中、富士スバルランド・ドギー・パークで多数の犬たちとたわむれて遊んだ後、すっごい渋滞(45キロ)の下り中央高速を尻目に、すいすいと上り車線を帰ってきてしまいました。富士五湖近辺は、25歳頃に友人に誘われてウインド・サーフィンをしによく遊びに行った所です(とはいえ、あれは悲惨な青春だったのですが、その話はまたいずれ)。
 で、午後は、国立の立川の古本屋一件と、国立の馴染みの古本屋へ行ってきました。国立の方は旭通りにある『谷川書店』という店で、ここのオヤジさんとは、30年来の付き合いです。私が古本を購入したのは、小学校5年生の時、この店で新潮文庫の『雪国』川端康成を買ったのが最初です。
 さて、そこのオヤジさんが、帰り際に、『二階堂さん、この本、読んだかい。読んでなかったら、貸すから読んでごらん。そのかわり、必ず返してくれよ』と、私に手渡したのが、牧眞司著『ブックハンターの冒険 古本めぐり』学陽書房でした。題名からお解りのとおり、本好きがどうして古本好きになったか、古本集めの苦労と楽しみとか、古本の中の特別な話題、などを収めた、古本好きの悲喜こもごもを書いた好著です。作者はSFマガジンなどでエッセイを書いている人で、名前は見たことがありますが、私はよく知りませんでした。
 で、その内容ですが。プロフィールを見始めたところから文章に進むにつれ、だんだんと目が丸くなりました。まず、彼の生年が私と同じ1959年で、少年時代に国立市の西区に住んでいて、古本好きになり、それ以来、この『谷川書店』に出入りしているということが子細に書いてあるわけで、ひどく私の生い立ちに似ているのです。彼の守備範囲はSFや現代文学で、私の守備範囲はミステリーと古典文学ですから、あまりバッティングしていませんが、いろいろと同じようなことが起きます。たとえば、高校時代は毎日、国立の旭通りを中心に複数の古本屋に寄ったとありますが、私は、小金井の中央大学付属高校へ通っていて、帰りはやはり、ここを中心に古本巡りをしたものです。彼は、高校時代にSFファンクラブに入って月1度渋谷へ行っていたとありますけれど、私の場合は、手塚ファンクラブに入り、月1回、『メトロポリス』という集会のために新宿へいそいそと出かけたものです。彼は古書店巡りをして赤点を取ったとありますが、私もデパートや神保町のの古書展に通って物理などで零点のテストを取ったことがあります(僕の場合は、手塚マンガ集めでしたが)。
 その昔の国立市のことをちょっと説明しますと、東区と中区が高級住宅地で、西区が中級から低級、矢川は田舎。谷保はヤホテントット原住民が住んでいる所でした。もちろん、私は東区に住んでいたので、旭通りは帰り道だったのです。
 正直言って、何で、こんなに境遇が似ているんだとびっくりしました。もしかして、彼と私は谷川書店で何度もすれ違っていたのでしょうか。
 この本の中で、谷川書店の近くにあったバラックの中にあった古本屋のことに触れていますが、彼は名前を忘れたようなので、私が書いておきます。『八潮書店』と言って、ネロ・ウルフみたいに太ったオヤジさんと、ひょろっと痩せた奥さんがやっていた店です。あと、少し府中寄りにいった所あった『渡辺書店』にも私は入り浸っていて、『幻影城』誌を最初に見つけたのもそっちの店でした。小説を売る時には谷川、マンガを売る時には渡辺書店と使い分けていたのであります。
 話は変わりますが、牧氏は、この本の中で、早川書房の『異色作家短編集』シリーズについて触れています。このシリーズは旧版と新装版があり、収録数が違うので、それがリストにもなっています。この章を読んだ私は、一階の居間から二階の書斎まで、脱兎のごとくダダダダダと階段を駆け上がりました。何故かと言うと、星新一が訳したフレドリック・ブラウンの『さあ 気ちがになりなさい』が旧版しかなく、しかも、月報が効き目だと書いてあったからです。私が血相を変えて階段を駆け上がったのは、「そんなはずはない。俺は旧版でこの本を持っている!」と、思ったからです。
 結論を書くと、それは私の勘違いでした。私が持っていたのは旧版で、このシリーズは、これとブロックの『血は冷たく流れる』、そして新装版の『無限がいっぱい』シェクリイでした(ただし、旧版2冊はカバーなし)。なんで、これらの本を持っているのかと言えば、それは自分でも解りません。「どうでもいい本コーナー」という本棚の一番下の奥の列にあるのですから。しかし、『さあ 気ちがになりなさい』に関しては、月報も挟まっています。ムヒヒヒヒヒ。
 ところで、何で、谷川書店のオヤジさんが、「この本は必ず返してね」と私に言ったかと言うと、これは牧氏からオヤジさんへの献本だったからです。表紙をめくった所に彼のサインが入っています。読み終わったら、ちゃんとお返ししますからね。

2000.05.04
 車の洗車をした後、古本屋を午前中に4件回るつもりで出かけましたが、小金井街道や青梅街道の渋滞で進めず(こういう時、カーナビは渋滞情報が入るから便利)、2件見ただけで帰ってきました。
 今日までの収穫:アップフィールド『ボニーと警官殺し』ミステリ文庫。『詐欺師ミステリー傑作選』河出文庫。広瀬正『T型フォード殺人事件』『エロス』集英社文庫旧カバー(『マイナス・ゼロ』だけは持っていたので、旧カバーで揃えることにしたのです)。創元推理文庫乱歩1冊。吉田竜夫『マッハGOGOGO』サンコミワイド、ムロロタニツネ象『地獄くん』サンコミワイド、松本零士『電光オズマ』全3冊大都社。武田京子『キャラメル2連銃』。

2000.05.06
『泥具根博士の悪夢の密室』の最終確認をして、メールで送信しました。テキスト・ファイルでのメールによる入稿はとても便利ですが、テキスト化によってルビなどが落ちてしまうのは非常に残念です。このあたりは、各作家が個別に対応(何らかの記号を付けるとか、別に指定するとか、ゲラの時に書き込むとか)しているわけですが、作家と出版社が話し合って、何らかの統一的な方法を確立できないでしょうか。
 収穫:ジュリアン・シモンズ『知られざる名探偵物語』ミステリ文庫、ヴァン・ヴォークト『終点:大宇宙!』、K・H・シェール『地球人捕虜収容所』創元推理文庫(このあたりはもう何を持ってて、何がないのかよく解りません。一度、書棚を点検してリストを作らねば)。乱歩少年探偵『大暗室』。ニーリィ『仮面の情事』。『ビーストン傑作集』創土社。『ルパン最後の冒険』ポプラ社。トリッテン『それからのハイジ』。クイーン編『犯罪文学傑作選』(クイーンのアンソロジーも、何を持っているのかよく解らない状態)。高木彬光角川文庫4冊。『マイ・ベストSF』創元推理文庫。

2000.05.07
 ちくま文庫から出る『二階堂黎人が選ぶ手塚治虫ミステリー傑作集「ビルの中の目」』の後書きを書き始めました。しかし、手塚マンガについては書きたいことがいっぱいあるので、かえって考えがまとまりません。
 ところで、東京創元社の創元推理文庫40周年記念に出ると言っていた創元推理文庫目録はどうなったんでしょうか。去年の夏に出る予定だったんじゃないんですかね。ただ、やたらにカバーや番号が変わっていたりするから、確認が難しいんでしょうね。
 収穫:レックス・スタウト『ネロ・ウルフ対FBI』。クロフツ『フレンチ油田を掘りあてる』。クラーク・ダールトン『流刑の惑星』HSF。『ポオ小説全集3』(旧カバー)。ブラウン編『SFカーニバル』創元推理文庫。中森清子『ひとりじめ禁止!』MC。

2000.05.08
 久しぶりに八王子へ行ったら、駅の近くにブックオフができていたのでびっくりしました。しかし、何にも買うものがありません。佐藤書店とブックエイトととブックバードで散財して帰ってきました。
 デジカメが修理から戻ってきました。結局、基盤交換とのこと。最近、パソコン及び周辺機器の値段が下がっているせいか、初期不良や故障が多いような気がします。私の購入品の場合、3割は初期不良で交換か修理をしています。そういうものと最初から思っていますから特に腹は立ちませんが。
 ホームページですが、[趣味]のページを、[博物館]と名前を変えました。近く、「絶版本」コーナーを設けようかと思っています。
 収穫:高木彬光角川文庫3冊。ガーブ『遠い砂』ミステリ文庫(旧カバー)。トウェイン『アーサー王宮廷のヤンキー』創元推理文庫(帆船マーク)。『日本を知る小事典3』教養文庫。乱歩少年探偵27、32、36、44ポプラ社。高木彬光長編推理全集2冊光文社(1冊は喜国さん用)。復刻版・学童社版『ジャングル大帝』全2巻。『シートン動物記』集英社全9巻。

2000.05.09
 ここ数日は体調が良いので、昨日は思い切って新宿まで出て、二つの出版社と打ち合わせをしました。しかし、久々に都内に出ると、空気の臭さに閉口します。打ち合わせは午後3時からだったので、その前に高田馬場の古本屋街へ行くことにしました。まったく欲しい本はなかったのですが、せっかく来たので、『復刻版少年マガジンマンガ全集』全3巻を購入しました。
 最初の打ち合わせは原書房。『密室殺人大百科』の原稿がどんどん集まっているので、それに基づいた台割を作り始めました。それから、ヴィンテージ・ミステリの新ラインナップとか、2001年4月から刊行が始まる『2001本格ミステリー・シリーズ』(国内もの書き下ろし)についての検討を行ないました。
 帰りに新宿紀伊国屋書店に寄りました。ここでは,チャールズ・ディケンズの『ハード・タイムズ』が新訳で出ているのを見つけました。大学の先生3人が共同で訳したものだそうで、英宝社という所から4830円で刊行されています。後書きを見ると、できるかぎり日本語になるよう訳したとありますが、「ハード・タイムズ」という題名はとても日本語とは言えないでしょうね。もう一考欲しかったところです。それにしても不思議なのは、日本語訳『ディケンズ全集』が出なかったことです。けっこう文学好きにとって人気のある作家だと思うんですが。ちくま文庫には、わりと最近、いくつかの作品が収録されましたが、その中で、北川悌二という人の翻訳はまるで日本語になっていません。あんなにひどい訳は珍しいとはっきり書いておきます。
 収穫:名香智子『ファッション・ファデ』全8巻フラワーコミックス。『復刻版少年マガジンマンガ全集』全3巻。

2000.05.10
 光文社のカッバノベルスが、この6月にミステリー・フェアをやることは前にお伝えしましたが、少し変更になり、6月と7月の2ヶ月間にわたって、本格ミステリーの力作を数点刊行する予定だそうです。ラインナップの一部の情報が入ったのでお知らせすると、6月が北森鴻氏(短編集+エッセイ)、覆面作家氏、期待の新人氏の3冊、7月が、小森健太朗氏、芦辺拓氏他4冊から5冊ということらしい。若竹七海氏の長編もどちらかに入るかもしれないとのこと(しかし、予定は未定ですぞ、皆さん)。
 で、特に注目は6月の新人氏と覆面作家氏。新人の方はガードが堅くて情報がないのですが、覆面作家氏の方は少し解ったことがあります。ある著名作家が、別名で(覆面を被って)書き下ろしたかなりの力作らしいのです。そうなると、無性に正体が知りたくなるわけですが、箝口令が敷かれているらしく、編集部はどうしても教えてくれません。内容の方も「傑作ですよ!」と言うばかり。ゲラを読ませてほしいと頼んでおきましたが、願いはかなうでしょうか。
 収穫:フィニィ『ゲインズバーグの春を愛す』。ハリイ・ハリス『銀河遊撃隊』。以上、早川文庫。『変身の原理』角川文庫オレンジ背。

2000.05.11
 ちくま文庫の手塚治虫アンソロジーの後書きを書き上げました。また、講談社文庫で7月に出る『私が捜した少年』のカバーの色見本をチェックしました。
 図書館向けに、大活字本というのが作られているのですが、そのシリーズの一冊に私の短編集も入りました。
株式会社リブリオ出版という所が出す『ほっとミステリーワールド11 二階堂黎人集』というものです。「サーカスの怪人」「素人カースケの世紀の対決」「縞模様の宅配便」の3短編が入っています。全15巻で、たぶん、全巻一挙に買わないと売ってくれないと思います。興味のある方は、03-3943-8885へ電話を。他に、江戸川乱歩らの『くらしっくミステリーワールド』、高木彬光らの『ポピュラーミステリーワールド』、赤川次郎らの『もだんミステリーワールド』、綾辻行人らの『げんだいミステリーワールド』があります。それぞれ15巻セットです。
 収穫:広瀬正『ツィス』集英社文庫旧カバー、乱歩創元文庫1冊、望月あきら『ローティーン・ブルース(4)』、桑田次郎『エリート(1)』サンワイド、竹宮恵子・萩尾望都『少女マンガ家になれる本』、細野みち子『金メダルへのターン(1)』、大和和紀『真由子の日記』全2巻KC、松本るい『あなたが好きです』。

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2000.05.14
 昨日は、初台のアスキーにて、『親指シフト・キーボードを普及させる会』の意見広告用の対談を実施。出演者は、作家の姫野カオルコさん、『親指ひゅん』の作者であるプログラマーの日笠建さん、名古屋大学の西野節男教授で、私と小森健太朗氏が司会進行役でした。「月刊アスキー」の6月号にその模様が載ります。
『密室殺人大百科』用の書き下ろし短編ですが、折原一さんから黒星警部ものの新作をいただきました。題名は『本陣殺人計画』。とても楽しいパロディでした。
 ふと思ったのですが、これまで作家さんからいただいた密室短編ですが、私が全部買い取って、私だけのものにしたらどうでしょう。なんなら、製本もして、世界に一冊しかない密室アンソロジーを作って、自分一人で金庫にしまって、時々取り出してはウヒウヒと楽しむわけです。うん、いいかもしれない。考えてみよう。

2000.05.15
 掲示板を見たら、密室短編を独り占めしないでくれとの訴えがありましたので、それはやめることにします。まじめに『密室殺人大百科』を出しますからお楽しみに。
 2ポートUSBハブと、マウスパッドのいらない光学式マウスを買ってきました。後者はノートパソコンに繋ぐためです。ノートを移動する度にマウスパッドも持ち歩くのは面倒なので。しかし、使ってみて解ったことは、光沢のある所と、白い所では、うまくマウスが使えないということです。そのことは、パッケージの中にある取り扱い説明書に小さく出ています。結局、マウスパッドを裏返しにして、黒い所で動かすと綺麗に位置検索が行なえることが解りました。いったい何なんだか。
 昨夜から、角川の「KADOKAWAミステリ」用の原稿を書き始めました。15日中にはメールで送る予定です。
 小森家健太朗氏のホームページのアドレスが変わりました。ここです。

2000.05.16
 「KADOKAWAミステリ」用『論理の聖剣』の原稿をメールで送った後、7月に講談社文庫から出る『私が捜した少年』のゲラの校閲を開始しました。この文庫のカバーは、グラフィック・デザイナーの松木美紀が担当してくれます。とてもポップで素敵なカバーです。双葉社版の大路浩実さんのカバーも可愛らしかったのですが、大路さんは中間色を多用するデザイナーなので、派手好みの私の趣味とは少し違っているんですね。
 ちなみに、私の好きな色は赤と青。嫌いな色は緑と茶。講談社ノベルスの背中が緑なので、たまらなく嫌なんですが、「な行」は「緑」と決まっていたので、どうしようもなかったのです。
 ラインハート『帰ってこない女』小学館文庫を読みましたが、想像どおり(想像するまでもないけど)、大甘の通俗サスペンスでした。スコット・トゥロー(だっけ?)あたりを絶賛するような人向けの小説ですね(ただし、訳文が新しい分、『螺旋階段』なんかよりは楽しめるかな)。小学館文庫のこのシリーズは、出た時に買っておかないとすぐになくなりそうなので、心配で、一応押さえています。
 収穫。乱歩『時計塔の秘密』少年探偵。藤子不二雄『パーマン』全7巻てんとう虫コミックス。『松田道弘あそびの本』3、5巻。串間努『思い出鑑定団』ぶんか社。

2000.05.17
 立風書房用の長編『春の水』の原稿100枚強は完全に破棄して、新しい作品を書くことにしました。何故、『春の水』がだめだったかと言うと、書いていてつまらなかったからです。自分で納得できない以上、こうするしかありません。トーマス・マンの『魔の山』のような感じで、高原のサナトリウムで少しずつ事件が起き、最後に蘭子が脇役で登場するという筋を考えていたのですが、そういうおとなしい話は私にはうまく書けないということが解ったしだいです。
 今度企画した作品の題名は『ゲーム館の殺人ゲーム』。題名からして前のものとはのりがぜんぜん違うでしょ。山梨県の山中湖畔にある西洋館が舞台なのに、実は孤島の連続殺人もので、6人の登場人物が全部死ぬけど、一人も実際に死ぬ人がいないという物語です。、しかも、蘭子は出ずっぱりなのに、事件現場にはまったく行かないという、こう説明すると、何だか不明な話です(笑)。
 とりあえず、登場人物の名前、舞台現場の地名、年月日の確認等、設計図を引きました。
 完成予定は、600枚で6月下旬。しかし、6月下旬と言えば、「メフィスト」の次の締め切りがあるのです。はたして、今度はうまくいくでしょうか。
 収穫。手塚治虫『ジャングル大帝』サンデーコミックス版全5冊。『マンガスーパーテクニック講座』『マンガ基礎テクニック講座』。忠津陽子『恋のフーガ』。カー『悪魔のひじの家』。広瀬正『タイムマシンのつくり方』集英社文庫旧カバー。

2000.05.18
  『密室殺人傑作選』用の原稿、柴田よしきさんの『正太郎と田舎の事件』と、霞流一さんの『らくだ殺人事件』が届きました。どちらも、お二人の特徴が良く出た素敵な作品です。柴田さんの方は、題名どおり、『柚木野山荘』に出てきたあのネコの正太郎君が活躍します。霞さんの方は、一歩間違えれば大バカトリックになるのですが、けっこう新機軸を打ち出しています。というわけで、ますますこのアンソロジーに御期待ください。
 ところで、今日はもうふんだりけったりの一日でした。まず、午前中は、黒犬クック様が家から脱走し、探し疲れました。お昼過ぎ、保健所から電話があり、1キロ先まで受け取りに行きました。ちなみに、何で逃げ出したかと言えば、すべてB型星人が悪いのです(解る人には解るでしょう)。
 で、午後、気を取り直して仕事をしようとしたら、何だか変なことに気づきました。「殺人」という言葉をキーボードで打とうとすると「さつ」までは入るのですが、「さつじ」になった所で、エラーが出てソフトが落ちてしまうのです。エディターでも、ワープロでも、何でもそうです。これはゆゆしき事態です。だって、推理作家が「殺人」という言葉を書けないなんて、おまんまの食い上げではありませんか。
 最初は、Rboard Pro for PCという親指シフト・キーボードとATOK13の組み合わせが悪いのかと思い、キーボード・ドライバーやATOK13(辞書のバックアップなどをしてから)を再インストールしました。しかし、症状は改善されません。そこで、Rboard Pro for PCを、富士通製の親指シフト・キーボードのKB-611に取り替えてみました。それでもだめです。safe modeでWindows98を起動しなおしてみてもだめです。その上、通信までできなくなってしまいました。
  そこで、いろいろと思案した結果、一太郎10を含むJUSTのアプリケーションを全部HDDから削除して掃除してみることにしました。そして、もう一度、一太郎10とATOK13を再インストールしたのです。
 これは正解でした。やっと、「さつじん」「殺人」と打ってもエラーが出なくなりました。結局、この復旧作業に6時間もかかってしまいました。もちろん、原因などは解りません。通信不能の方も、ダイアルアップ・ネットワークを登録しなおして何とか復旧しました。
 というわけで、今日はもう何もする元気がありません。お風呂に入って寝ます。ああ、疲れた。
 収穫:水野英子『こんにちは先生』全2巻。忠津陽子『結婚の条件』4巻。望月あきら『ローティーン・ブルース』2、3、5巻。

2000.05.19
 秋田書店のマンガ雑誌「サスペリア」6/25日増刊号、ミステリーSP『名探偵に愛をこめて』が発売になりました。内田康夫さんの名探偵・浅見光彦、二階堂黎人の名探偵・二階堂蘭子他、豪華メンバーがマンガになって勢揃いです。定価は590円。
 内田康夫「博多殺人事件」浅見光彦
 二階堂黎人「薔薇の家の殺人」二階堂蘭子(これは新作です)
 二階堂黎人「軽井沢マジック」水乃サトル
 太田忠司「金糸雀は、もう鳴かない」狩野俊介 他。

 それから、ミステリーアンソロジーの『不在証明崩壊』が、角川文庫に入りました。有栖川有栖、法月綸太郎、芦辺拓、二階堂黎人(変装の家)ら8編の短編が収録されています。
 書名    不在証明崩壊
 版型    文庫(角川文庫)
 定価    560円
 初版の日付 2000年5月25日
 ISBN  ISBN4-04-191303-9
* 鉄壁のアリバイを崩せ。あなたは完全犯罪をすべて看破できるか?

 『親指シフト・キーボードを普及させる会』のホームページに、マック用の親指シフト・キーボード(Rboard Pro for mac)のモニタープレゼントのお知らせがありますので、御覧ください。

2000.05.20
「KADOKAWAミステリ」に連載している『論理の聖剣』のゲラの校閲。講談社文庫のある企画本のカバー見本刷りの確認(しかし、この企画、本当に実現するの?)。蘭子の長編は30枚を突破。
 パソコンもようやく調子を取り戻してきました。だんだんとフリーズしなくなってきました。良かった良かった。
 しかしやっぱりデーターだけではなく、HDD全部をCD-RでCDにバックアップを取るべきでしょうか。試しにCD-Rバックアップ用の起動ディスクを作ってみたのですが、内蔵CD-ROMを認識しません。CONFIG.SYSを何度か書き換えてみましたがだめです。1時間ほどやってあきらめました。バックアップ用ソフトを買ってきた方が早そうです。
 腰痛対策に、前々からバランスチェアを使っているのですが(普通の椅子と半々)、何かもっと良いものはないかと考えて、ハーマン何とかのアーロンチェアを買おうかと思い立ちました。この椅子、14万円ぐらいとムチャクチャ高いのですが、評判は非常に良いのです。欲しい。

2000.05.21
「公募ガイド」のアンケートにメールで答えました。作家における資料の必要性についてが題目でした。
 愛川晶さんから短編『死への密室』が来ました。読みました。とてつもなく意外性がある物語で、愛ちゃんシリーズの最高傑作ではないでしょうか。『海の仮面』や『夜宴』などの長編をはじめ、今本格シーンでもっとものっている作家と言えば愛川晶さんですね。
 小森健太朗さんからは『密室講義』が届きました。こちらも簡潔にして要点を網羅しており、非常に理知的な研究です。アンソロジー『密室殺人大百科』はさらに内容が充実しています。あとは、芦辺拓さんの作品が届けば、ほぼ完成となります。ほぼと述べたのは、自分が前書きやコラムを書かねばならないからなんですけどね。

2000.05.23
 芦辺拓さんから『失踪するジョーカー』が届きました。思わず「うまい!」と叫ぶでき。謎のプレゼンテーションと動機の振り回し方が絶妙の作品です。これで、『密室殺人大百科』の書き下ろし作品は揃いました。あとは、自分が前書きやコラムを書くだけです。というわけで、書いています。
 太田忠司さんも使っているということで、アーロンチェアを買うことにしました。きくところによると、井上雅彦さんや鈴木輝一郎さんも使っているとか。作家には愛用者が多いのかもしれませんね。と、そこへ、別の情報も入ってきました。アーロンチェアはもう古い。今は、リープチェアとかプリーズチェアだと言うのです。どれにしたらいいのでしょう?

2000.05.25
 本の小山をひっくり返しながら、『密室殺人大百科』の前書き・コラム・リスト作りを続けています。その間に、何か細かい仕事をしたような気がしますが、忘れました(あ、ちくま文庫の手塚治虫アンソロジーの表紙の決定とか。蘭子シリーズのマンガのネームの確認とか)。
 そうそう。当アンソロジーには、鯨統一郎さんの「閉じた空」も収録されます。探偵役が萩原朔太郎で、非常に面白い内容になっています。
 今年は、「メフィスト」に蘭子シリーズを3回書きますと予告していましたが、ちょっとよんどころない事情で予定が変わってしまいました。というのも、7月に講談社文庫でミステリー・フェア用に「Yの悲劇」という書き下ろしアンソロジーが出ることになったのです。メンバーは、有栖川有栖、法月綸太郎、篠田真由美、二階堂黎人ということになります。テーマが「Yの悲劇」というよく解らないものでして、クイーンへのオマージュかと言うと、完全にそうでもないようですし……(法月氏に問い合わせたが、明確な返事はもらえなかった)。それで、私もここに単発ものの短編を書くため、スケジュールの変更があり、次回の「メフィスト」には時間的に書けないというしだいになったのです。ファンのみなさんにはご迷惑をかけますが、何とぞ御了承ください。

2000.05.26
 昨夜は角川の横溝賞のパーティーでした。ここのところ体調が良かったので、久しぶりに行きました。ついでに、昼間早めに家を出て、購入予定の椅子を見てきました。
 新宿の丸井インテリア館にアーロンチェアがあると聞いていたので行ってみたら、インテリア館がなくなっているではありませんか。何でも、池袋に移転したとか。それで、さらに池袋まで移動です。しかし、行ったかいはありました。アーロンチェア、プリーズチェア,リープチェアが全部展示してあったからです。さっそく、一つずつ座り心地を試します。最初に、プリーズチェアが落ちました。背中の部分は気持ちが良いのですが、座面が、従来のものとそれほど変わりがないような気がしたのです。アーロンチェアとリープチェアは互角です。ただ、座り心地はまったく違います。前者は未だかつて座ったことがないようなフワフワしたハンモックのような感じです。後者は、通常のオフィスチェアを非常にグレードアップした感じです。どちらも短時間では甲乙付けがたいという印象でした。値段を尋ねてみると、定価販売の上、納期がいくらかかかるというのでやめにしました。
 夜6時からは、角川のパーティーに出席。少し早めに日比谷の東京會舘について、ロビーで柴田よしきさんらとお茶。彼女に椅子の話をすると、彼女もアーロンチェアを使っていて、非常に具合が良いといいます。やはり、作家で使っている人は多いようです。
 パーティーで何があったかはよく覚えていません。そうそう。森奈津子さんという作家を紹介してもらいました。この人についての詳しいことは、たぶん西澤靖彦さんの日記にかかれていたと思います。柴田さんの他には、綾辻さん、竹本さん、山口さん、我孫子さん、霞さん、新津さん、北村さん、などどお話をしたような。そうそう、赤い悪魔がいました。虎の穴から来た……。
(すみません。帰ってきて寝たのが夜中の1時だったので、寝不足のため、記憶が定かではないのです)。
 そして、今日になってから、両方の椅子の販売店(自分の家からなるべく近い所)を電話で探し、納期の早いほうに決めることにしたのです。すると、アーロンチェアは二週間かかるのですが、リープチェアは来週の水曜日に納められるといいます。それで、リープチェアに決定しました。
 他には、延々、『密室殺人大百科』の原稿書き。

2000.05.28
 島田荘司『季刊 島田荘司』、北森鴻『狂笑面』、岩崎正吾『探偵の冬あるいはシャーロック・ホームズの絶望』と、続々と読むのが楽しみな新刊が出ています。ところが、忙しくて読む暇がない。パソコンと原稿の見過ぎでそろそろ頭がフラフラしてきました。
 『密室殺人大百科』の原稿書きとゲラの校閲の合間に、昨日の午後は、久々の《発掘し隊》に参加。しろくまさん、石井さん、彩古さん、とんぺーさん、貫井徳郎さんらと荻窪近辺の古本屋を巡回しました。古本屋のより、この人たちに頼んでおいた方が欲しい本が見つかる確立が100倍も高いというのが、今回の巡業でも立証されました。
 今日までの収穫:乱歩・少年探偵『白い羽根の謎』『蜘蛛男』(以上、喜国さんより)。レマルク『リスボンの夜』、中島河太郎編『日本ミステリーベスト集成』(2)(3)、忠津陽子『ようこそ愛』(以上、石井さんより)。グルーバー『遺書と銀鉱』六興キャンドル(以上、しろしまさんより)。水野英子『ムッシュ泥棒』サンコミ。スタウト『我が屍を乗り越えよ』ポケミス。光文社手塚治虫全集版『ジャングル大帝』(2)(4)。乱歩『地獄の道化師』角川文庫。天藤真『陽気な容疑者たち』角川文庫。ジョーンズ『バスター先生の動物記』芸文社。乱歩・少年探偵『一寸法師』。南洋一郎・ルパン全集『黄金三角』『妖魔と女探偵』『ルパンの二つの顔』。大和和紀『ハロー・ジェミニ』全2冊講談社漫画文庫。

2000.05.31
 昨日は、小石川で、マンガ家の水野英子先生が主宰する「少女マンガを語る会」に主席させていただきました。題目は「貸本少女マンガ」。出席者の中には、水野英子先生の他、今村洋子先生、むれあきこ先生、北島洋子先生、花村えい子先生、わたなべまさこ先生、矢代まさこ先生、望月あきら先生、巴里夫先生という豪華な、それこそ、綺羅星のごときスター・マンガ家の先生方がいらっしゃっていて、もう、私はひたすら感激の巨大眼です。
 わたなべ先生、すごいです。蘭子も顔負けの縦巻きロールです。
 花村先生、たいへんにお上品な方です。
 水野先生、お描きになられる女主人公のように元気溌剌です。
 今村先生、マンガの中の明るい少女がそのままお年を召したようです。
 北島先生と望月先生には、持っていった本にサインをしてもらいました。ありがとうございました。
 巴先生はイギリス紳士のような方で、むれ先生は非常に落ち着いた方で、矢代先生はまるで洋画家のような感じでした。
  貸本時代の貴重な話を数々聞けたし、ようこシリーズの原画が見られたし(竹本健治さんがうらやましがるだろうな)、とても有意義な一日でした。
 で、本日なのですが、明け方から具合が悪くなってしまいました。角川のパーティーから数えて三度の外出、そろそろ危ないかと思っていたら案の定です。腹痛、吐き気、頭痛の三重苦。しかし、原稿書きが待っているので逃げるわけにはいきません。こずえ、頑張るのよ!
 それにしても、忙しい時にはいろいろ起こるものです。朝、パソコンの電源用コンセントのスイッチを入れたら火花が出て、ショートしてしまったのです。幸い、パソコンは無事でしたが、コンポーネント・ステレオのアンプがいかれてしまいました。トホホです。
 そうそう。ついにリープチェアが来ました。これについてはまた今度のご報告ということで。

 





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